赤口のジャズ

1/3
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

赤口のジャズ

【カズキ、話がある。だから早く帰ってこい】 バイトが終わってスマホを見ると珍しく親父からのLINEメッセージが届いていた。おまけ程度に不在着信も5件と留守番電話1件。なんか様子がおかしい。 「カズキ君。みんなでご飯一緒に行かない?」 バイト先のマドンナ、ユメちゃんからのお誘い。気持ちがぐわんぐわんと揺らいだ。だけどファンキーから飛び出したようなあの親父のことだ、無視したら大変なことになるのは目に見えてたから丁重に断った。ユメちゃんはさして残念そうな様子もなく「わかったー」と言って、コーキ達とご飯へと行ってしまった。 コーキ達に一歩リードされちまうなぁ、と少し肩を落としつつ家路を急ぐ。あんな連絡をよこして一体、何の話だろうか。 今から漫画家目指すとか言い出したり? うーん、ありえる。 都知事選に立候補するとか? いやいや、ありえる。 無人島で暮らすとかじゃないだろうな? さすがに……ありえるんだよなぁ、これが。 もしかして再婚するとか? それはありきたり過ぎるから、逆にないな。 「カズキ、父はこの人と結婚することにしたから」 はああああ!? 玄関開けたら、親父が仁王立ちしていて開口一番そんなことを言いやがった。そしてその隣には見知った顔。 「アホか!おかしいだろ!」 「いや、父は本気だぞ」 「よろしくお願いします」 「いやいやいや!つーか、お前も『よろしくお願いします』じゃないから!」 俺は親父の隣に立っている幼馴染のミィに向かって大声を上げた。だけどミィはにっこり笑い「不束者ですが」と言って深々と俺に頭を下げた。 親父が幼馴染と結婚する? そんなの許すわけないだろ!
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!