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赤口のジャズ
【カズキ、話がある。だから早く帰ってこい】
バイトが終わってスマホを見ると珍しく親父からのLINEメッセージが届いていた。おまけ程度に不在着信も5件と留守番電話1件。なんか様子がおかしい。
「カズキ君。みんなでご飯一緒に行かない?」
バイト先のマドンナ、ユメちゃんからのお誘い。気持ちがぐわんぐわんと揺らいだ。だけどファンキーから飛び出したようなあの親父のことだ、無視したら大変なことになるのは目に見えてたから丁重に断った。ユメちゃんはさして残念そうな様子もなく「わかったー」と言って、コーキ達とご飯へと行ってしまった。
コーキ達に一歩リードされちまうなぁ、と少し肩を落としつつ家路を急ぐ。あんな連絡をよこして一体、何の話だろうか。
今から漫画家目指すとか言い出したり?
うーん、ありえる。
都知事選に立候補するとか?
いやいや、ありえる。
無人島で暮らすとかじゃないだろうな?
さすがに……ありえるんだよなぁ、これが。
もしかして再婚するとか?
それはありきたり過ぎるから、逆にないな。
「カズキ、父はこの人と結婚することにしたから」
はああああ!?
玄関開けたら、親父が仁王立ちしていて開口一番そんなことを言いやがった。そしてその隣には見知った顔。
「アホか!おかしいだろ!」
「いや、父は本気だぞ」
「よろしくお願いします」
「いやいやいや!つーか、お前も『よろしくお願いします』じゃないから!」
俺は親父の隣に立っている幼馴染のミィに向かって大声を上げた。だけどミィはにっこり笑い「不束者ですが」と言って深々と俺に頭を下げた。
親父が幼馴染と結婚する?
そんなの許すわけないだろ!
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