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「親父、やっぱ俺、この結婚には反対だよ。つーかよ!ミィを親父になんかに渡したくねぇ!」
親父は黙ったまま俺を見る。俺の言葉を待っているように見えた。その時、何故だかガキの頃に親父とキャッチボールした時のことを思い出した。そこにいるのは、デカくて、カッコよくて、自慢の親父。
俺はそんな親父に向かって叫んだ。
「俺はミィが好きだ!だから親父、俺はアンタからミィを奪ってやる!」
その瞬間、親父はニヤッと笑った。そして次の瞬間……
「おせーよ!このバカ息子!」という声と共に俺の顔面に強烈な拳が飛んできて、俺の記憶はそこでなくなった。
「大丈夫?」
遠くから飛んできた言葉で目が覚める。ぼんやりとした視界には女性の顔がぼやけて見えた。後頭部には柔い感触。ああ、懐かしい感じ。膝枕されてんだ俺。
俺はその感触に甘えるようにお腹に顔を埋める。
「……母さん」
「えっ、きゃ!カ、カズ君!」
「……え?」
「バカヤロウ!嫁入り前の娘に何してんだ!」
「いででっ!」
耳をちぎられそうになるくらいに引っ張り上げられる。はっきりとしだした視界に映ったのはミィの姿。
「そんなに不埒な男に育てた覚えはない!」
「痛ぇって!離せ!クソ親父!」
ミィから引き剥がされて、ようやく耳から手を離す親父。マジで耳が取れるかと思った。
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