七月八日

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「今日は、織姫と彦星は会えるかなぁ?」  窓から見上げた空は、薄ぼんやりと灰色に染まっている。 「今夜の降水確率は六十パーセントだ。この雲だし、間違いなく雨が降るだろうね」  トーストをかじるメガネは、朝の情報番組にはりついている。 「ほら、天気予報でも傘持ってけってさ」  私は、マグをふたつ持ってテーブルに着いた。ひとつはハチミツとミルク入り。もうひとつは差し出した途端に口元に運ばれ、その上のメガネを曇らせている。中身は、ぜんぜん甘くないブラックコーヒー。 「神様も意地悪だよねぇ。なんで、こんな雨が降りやすい日にしたんだろうねえ」 「なにが?」 「何がって、もー、だーかーらー織姫と彦星が会える日だよー。今日は七夕でしょー」 「宇宙に天候は、関係ないだろ」 「そーだけどさー。もっとなんていうのー。すっきり晴れて気落ち良くデートさせてあげたいじゃん」 「ふーん。でも、いわゆる雨とか晴れとかの天候は宇宙にはないぞ。宇宙の天候は太陽フレアとか磁場に関するものだな。地球の電子機器にも影響が出ることがある」 「そーじゃなくってー。もっとロマンチックな話をしてるんじゃない」  メガネが冷たく翻った。何のムードも慈悲もない。 「君の話は生産性がないね。朝の忙しい時に」 「どうせ私の話は、なんの役にも立ちませんー」  もういいです。あほー。あほメガネ。  いっぺん流れ星にでも、頭ぶつけて出直してこーい!  七夕の今日から、ロマンチックな気分になりたかっただけなのにさ。  明日、何の日か覚えてる?
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