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夢じゃなかった
目が覚めて、
テーブルの上には、パンやゼリーや風邪薬が入ったコンビニの袋。
その横に、
数字やアルファベットが書かれたメモ紙。
足立くんとの再会は、
夢じゃなかった。
ヒドイことをしたと、ずっと後悔していて。
時が経つにつれ、
何度か他の恋愛も経験して風化はしたものの、
それこそこんな風にニキビが出来る度に、
なんの非もない足立くんに、
いきなりあんな態度をとって、
差し出された手を振り払って、理由も告げず逃げ出すなんて。
しかもその後いくらでもフォローも出来ただろうに、自分が傷付くのを恐れて、目を背け続けた。
今なら分かる。
大人になった今なら。
自分が何をすべきか。
何から逃げたらいけないのか。
これは神様がくれたチャンスかもしれない。
謝ろう。足立くんに。
そしてあの日言えなかったことを、ちゃんと伝えよう。
そのためにまずは。
テーブルの上のメモを取って、スマホの画面に向かう。
『桜木です。
昨日はありがとう。おかげで今朝はもうほとんど良くなりました。
それと、昨日は体調悪くて言えなかったけど、もちろん覚えてます。足立くんのこと。忘れるわけ、ありません。
今度お礼がしたいので、また会えると嬉しいです』
送信
わー!送っちゃったよ!
しかもなんか意味深なカンジの文面を。
既読8:58
わー!
もう読んでる!
ピコン
『良かった。ちゃんと帰れたか心配してたんだ』
ピコン
『覚えててくれて良かった。
お礼なんていらないけど、せっかく久しぶりに会ったんだし、またメシでも食いに行こう。都合のいい日教えて』
わー!
なんか、あっという間に会う方向で話進んでる!
『うん、連絡します。
でも、誘っといて悪いんだけど、しばらく忙しいかもしれなくって。ちょっと先になってもいいかな?』
私はある決意があって、そう返信した。
カンジ悪いかな、社交辞令とか思われてないかな。
ピコン
『いいよ。じゃ、連絡待ってます』
ピコン
『楽しみにしてる』
キャー!
なんかトントン拍子にいいカンジだ!
行動するって、やっぱり大事だ。
勢いづいたまま、今度はネットで検索する。
足立くんに会うには、
まずここから始めないと。
告白しようとしたあの日。
私の勇気を挫けさせた、
一番最初の原因。
『大人ニキビ スキンケア』
最高の私で、
足立くんに思いを伝えたいから。
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