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恋せよ大人女子
思えば、
何でもっと早くちゃんとしなかったんだろう。
薬塗り込んで、そのうち消えればいいや。メイクで隠せばいいや。
そんなふうに、安易に考えてたんだ。
スキンケアは奥が深い。
自分に必要なものを、丁寧に継続すれば、ちゃんと肌は答えてくれる。根本から変える努力が必要だと、今更分かった。
大人ニキビはやがて消え、肌全体の調子も明らかに変わった。
ホントはまだ経過途中だけど、
お礼をするとか言っといて、あまり待たせるのもいけないし。
お互いの都合の合う日程を調整したら、
会うのは一ヶ月を過ぎた頃になってしまった。
足立くんが予約してくれたお店は、カンジのいい居酒屋さんで、足立くんの行きつけの店らしい。
オススメをいくつか頼んでくれて、
足立くんは生ビール、私はカシスオレンジで小さく乾杯した。
「改めまして、先日は助けてくれてありがとう」
向かいに座る足立くんを真っ直ぐ見るのは、やっぱり恥ずかしい。
でも、今日の私には、
思春期ニキビも、大人ニキビもない。
肌はここ近年で一番調子いいし、
髪のお手入れもぬかりなし。
食生活にもちゃんと気を遣ったから、体重も少し落ちたし、
早寝早起きを出来るだけ心がけた。
メイクだって、動画見て研究した。
やれることは、やったつもり。
だから、足立くんに見られても恥ずかしくない自分のはずだ。
「イヤ、あの時はほんとビックリしたよ。まさかあんな風に会うなんてね」
そう言って笑った後、ビールのジョッキを傾ける仕草を見て、
当たり前だけど、大人の男性になった足立くんにドキッとする。
こないだは、ちゃんと見ることが出来なかったけど、
あの頃短髪だった髪は、耳に少し被るくらいの長さで、ワックスでセットされてる。
喋る度に動く喉ぼとけがセクシーで、
あの頃より低く響く声もドキドキする。
ああ、あの頃の足立くんとは違うのに、
やっぱり私はこの人に惹かれるんだ。
それから、色んな雑談をして。
同級生の伊藤くんと三上さんが結婚したこと。足立くんは今、理学療法士として整形外科で働いてること。3ヶ月前に引っ越したこと。お互いが住むマンションの最寄り駅が同じだということ。
今の情報が少しずつ分かった。
「同じ駅使ってたから、あの日会えたんだね。じゃあもしかして、今までもすれ違ったりしてたかも!」
私が言うと、足立くんが一瞬驚いたような顔をした。
「うん。そうかもね。全然気付かなかったけどね」
なんだかぎこちなく微笑んだ気がしたのは、気のせいだろうか?
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