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「今日会うまでも、何回か駅で見かけてる。引いただろ?全然気付かなかったとかウソついたし」
足立くんは申し訳なさそうにまた頭を掻く。
「引いたりはしないよ。声かけづらいのは当然だし。ただ、私の変なとこ見られてたんじゃないかって、恥ずかしいけど」
「変なとこなんてないよ。いつも仕事頑張ってるんだなって思ってた。疲れてそうな時が多かったから、心配はしてたよ。でも…最近なんか雰囲気変わったよな。それも気になってて…何かあった?」
何かあったかなんて…
足立くんに会ったからだよ。
それを言う前に、質問してみる。
「雰囲気変わったって、どんな風に?」
彼の目に、今の私はどんな風に映っているのだろう。
「キレイになったなって、思ったよ」
低い声が、
甘く胸に響く。
そして同時に、努力が報われた嬉しさで
目頭がジンと熱くなった。
私の頑張りが、一番認めて欲しい人に届いたんだ。
「さっき言ってくれたことだけど…中学の時、俺に告白しようとしてくれたってヤツ。あれは、過去の俺に対してだけの告白?今の俺の返事は、必要ない?」
照れ屋だったはずの足立くんが、
今は真っ直ぐ私を見てる。
そんなことを言われるなんて、思ってもみなかった。
ただ、あの時の思いを伝えることに必死で。
「俺さ、中学の時まだガキで、色々後悔したんだ。だから今はちゃんと言いたい」
足立くんの視線に囚われて、私は少しも動けない。
「誰のためにそんな風にキレイになったのか、正直妬けるって思ってる。好きなんだ…桜木さんのこと」
言いきった後、やっぱり赤くなって目をそらした彼の姿が、
14の、まだ幼さの残る彼の姿と重なる。
私ももう後悔したくない。
長い長い時間がかかったけど、
今度こそ、
真っ直ぐ彼を見て告げる。
「足立くんのことが、あの時も、今も、大好きです」
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