恋せよ大人女子

3/3
前へ
/14ページ
次へ
「今日会うまでも、何回か駅で見かけてる。引いただろ?全然気付かなかったとかウソついたし」 足立くんは申し訳なさそうにまた頭を掻く。 「引いたりはしないよ。声かけづらいのは当然だし。ただ、私の変なとこ見られてたんじゃないかって、恥ずかしいけど」 「変なとこなんてないよ。いつも仕事頑張ってるんだなって思ってた。疲れてそうな時が多かったから、心配はしてたよ。でも…最近なんか雰囲気変わったよな。それも気になってて…何かあった?」 何かあったかなんて… 足立くんに会ったからだよ。 それを言う前に、質問してみる。 「雰囲気変わったって、どんな風に?」 彼の目に、今の私はどんな風に映っているのだろう。 「キレイになったなって、思ったよ」 低い声が、 甘く胸に響く。 そして同時に、努力が報われた嬉しさで 目頭がジンと熱くなった。 私の頑張りが、一番認めて欲しい人に届いたんだ。 「さっき言ってくれたことだけど…中学の時、俺に告白しようとしてくれたってヤツ。あれは、過去の俺に対してだけの告白?今の俺の返事は、必要ない?」 照れ屋だったはずの足立くんが、 今は真っ直ぐ私を見てる。 そんなことを言われるなんて、思ってもみなかった。 ただ、あの時の思いを伝えることに必死で。 「俺さ、中学の時まだガキで、色々後悔したんだ。だから今はちゃんと言いたい」 足立くんの視線に囚われて、私は少しも動けない。 「誰のためにそんな風にキレイになったのか、正直妬けるって思ってる。好きなんだ…桜木さんのこと」 言いきった後、やっぱり赤くなって目をそらした彼の姿が、 14の、まだ幼さの残る彼の姿と重なる。 私ももう後悔したくない。 長い長い時間がかかったけど、 今度こそ、 真っ直ぐ彼を見て告げる。 「足立くんのことが、あの時も、今も、大好きです」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加