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5分後くらいだろうか。
ぼんやりとベンチに座る私の元に、コンビニの袋を持ったその人が戻って来た。
「とりあえず、熱もあるみたいだし、水分とってください」
言われるまま、差し出されたペットボトルを口に運ぶ。キャップは既にゆるめられていて、その人が開けてくれていたんだと気付く。
口内に水が流れ込み、ひんやりとして気持ちいい。
そのまま何度か水を飲むと、しばらくして少し楽になったカンジがした。
「少し落ち着きました?」
私の隣の、他人が座っても気にならない程の間隔を開けたところに、彼は座っていてくれた。
少しだけ考える余裕が出来て、
そこでようやく、親切すぎるこの人の存在を再認識する。
見ず知らずの人にここまでしてもらって、情けないやら申し訳ないやら。
「あの…おかげさまで少し楽になりました。ご親切にありがとうございます」
こんな悲惨な状態だし、ハッキリと顔を合わせるのも恥ずかしくなって、失礼だとは思いながらもうつむき加減でお礼を言う。
視界の端にちらっと映ったその人は、どうやら同年代の男性のようだった。
ほっ、と、安堵したような吐息が漏れ、
それがなんだかとても色っぽく感じて、体調悪いくせになんて不謹慎なんだと、自分で自分が恥ずかしくなる。
「家はお近くですか?ひとりで帰れそう?」
この後のことまで心配してくれる男性は、よく聞くと低くて落ち着いた、とても優しい声で、なんだか安心してしまう。
「ここから徒歩5分くらいのところですので、多分大丈夫だと思います」
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