6人が本棚に入れています
本棚に追加
「実は今、ハムスター飼いたいと思ってて…」
ぽつり、ぽつりと途切れ途切れに喋る足立くんの言葉が、私だけに向けられていることに感動して、返事をすることも忘れ、彼を見守る。
「どの種類がいいかなぁって、最近スマホで動画とか写真とか見てて」
「昨夜ちょうど、コイツがいいなって思ってたのとそっくりなのが、画面に見えたから、つい…」
「声…出た」
「勝手に覗いてゴメン」
なんと言うかもう、可愛すぎて。
いつもの硬派さとのギャップに、破壊力半端ない。
そしてさすがの私も、これがまたとないチャンスだと気付く。
行動しなければいけないと。
「あの…他にも写真あるけど、良かったら見る?」
私が震える手を必死に押さえて、スマホのハムちゃんホルダーを開くと、
「えっ、いいの?」
途端に足立くんが私との距離を一歩詰めた。
わー!わー!わー!
近い!近い!近いー!!
心の中で絶叫しながら、
平静を装って、足立くんに見えやすいようにスマホを傾ける。
「わー、手ちっちぇ。歯も。これ、しっぽ?マジか。かわいすぎんだろ」
かわいすぎるのはあなたですって…
彼がスマホの画面に夢中になってるのをいいことに、私の顔面は堪えきれずニヤケまくってた。
「俺、近々ペットショップに行くから、いろいろと教えてもらえると助かる」
急にこっちに視線を移され、私は慌てて平静を装う。
「あー、うん。OK!お安いご用だよ。とりあえず、飼い方の本とか貸そうか?」
「いいの?じゃ、頼む」
こうして私は我が家のペット、ハムスターのテン吉のおかげで、足立くんとお近づきになることに、ようやく成功した。
まさかたった二か月後に、また全然喋れなくなるなんて、思いもしなかったけれど。
最初のコメントを投稿しよう!