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「実は今、ハムスター飼いたいと思ってて…」   ぽつり、ぽつりと途切れ途切れに喋る足立くんの言葉が、私だけに向けられていることに感動して、返事をすることも忘れ、彼を見守る。 「どの種類がいいかなぁって、最近スマホで動画とか写真とか見てて」 「昨夜ちょうど、コイツがいいなって思ってたのとそっくりなのが、画面に見えたから、つい…」 「声…出た」 「勝手に覗いてゴメン」 なんと言うかもう、可愛すぎて。 いつもの硬派さとのギャップに、破壊力半端ない。 そしてさすがの私も、これがまたとないチャンスだと気付く。 行動しなければいけないと。 「あの…他にも写真あるけど、良かったら見る?」 私が震える手を必死に押さえて、スマホのハムちゃんホルダーを開くと、 「えっ、いいの?」 途端に足立くんが私との距離を一歩詰めた。 わー!わー!わー! 近い!近い!近いー!! 心の中で絶叫しながら、 平静を装って、足立くんに見えやすいようにスマホを傾ける。 「わー、手ちっちぇ。歯も。これ、しっぽ?マジか。かわいすぎんだろ」 かわいすぎるのはあなたですって… 彼がスマホの画面に夢中になってるのをいいことに、私の顔面は堪えきれずニヤケまくってた。 「俺、近々ペットショップに行くから、いろいろと教えてもらえると助かる」 急にこっちに視線を移され、私は慌てて平静を装う。 「あー、うん。OK!お安いご用だよ。とりあえず、飼い方の本とか貸そうか?」 「いいの?じゃ、頼む」 こうして私は我が家のペット、ハムスターのテン吉のおかげで、足立くんとお近づきになることに、ようやく成功した。  まさかたった二か月後に、また全然喋れなくなるなんて、思いもしなかったけれど。
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