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告白しようと思ったその日。
赤く大きなニキビが、鼻と口の間に出来ていた。
よりによって、一番間抜けに見える場所じゃない?
前髪が、変なところでパックリ分かれて直らない。
寝不足で、顔むくんでるし。
出掛けに見た、いつもの星座占いは、
水瓶座最下位。
こんな小さなことだけど、
マイナス要因が重なると、不安にならずにはいられない。
まるで今日の告白は、上手くいかないよって、暗示されてるみたいで。
こういう時のイヤな勘って、
当たっちゃうものだよね。
校門をくぐって、
自転車小屋の横を通りすぎようとした時、小屋の裏の奥まったスペースに、男女の姿が見える。
2人の間にはパッと見て分かるくらい、特別な空気が流れていた。
女子の方は、学年一番人気の佐山さん。
男子の方は、後ろ姿で顔が見えない。
けど、
次の瞬間、
彼の背負う、小豆色のリュックに目が止まる。
胸が急にざわつく。
そうであって欲しくないと思えば思う程、後ろ姿の襟足も、耳の形も、誰よりも見覚えのある彼のものと一致してしまう。
「私、足立くんのコトが好きなんです!付き合ってください!」
聞きたくない台詞が、耳から一気に心臓に突き刺さった気がした。
ああ、
ほらね。
イヤな予感、
当たっちゃった。
立ち聞きしたのを気付かれないように、
足早に立ち去る。
どくどくどくどく
心臓が、早く重たく脈打つのを感じる。
足立くんだった。
学年一番人気の佐山さんに、告白されていたのは、
私の好きな人だった。
一瞬で目に焼き付いた、佐山さんの姿が浮かぶ。
きちんとブローされた、サラサラツヤツヤの髪。
色白で、ニキビなんて全くない、つるつるの肌。
薄付きのリップをつけているのか、ほんのりと桃色に染まる唇が、彼女の整った顔立ちを一層際立てている。
ヒドイなぁ。
告白しようと、頑張ろうとしたその日に、
変なところに大きなニキビが出来て、
前髪は直らないし、
占いは最下位だし、
挙げ句に目の前で、
こんなに完璧な告白を見せられちゃうなんて…
心の中で、
積み上げたものが崩れていく音がする。
あんなキラキラした人に告白されて、断る人なんていない。
こんな状態で、
こんな顔で、
告白なんて…
出来るはずがないよ。
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