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20代の女子は、年上の男にあこがれがあったりすると聞く。けれどそれは基本『頼りがいのある、イケメンな年上の男』に対して向けられるものだろう。
僕のようなか弱そうな羊タイプの男はなかなか需要がない。そこまで考えてもう一度小さくため息をつく。
それでもやっぱり諦められない。こんな気持ちになった女の子は彼女が初めてだ。
男の比率が高いうちの会社で、園田さんは当然モテる。少なくとも彼女と同期の男が狙っているという話を聞いたことがあるし、同じ部の2年後輩の川井も、絶対彼女に気がある。
休憩スペースで、積極的に園田さんに話しかけている川井を見ると思わずため息をつきそうになる。
川井はそこそこイケメン。しかも仕事もバリバリこなす、営業本部第一課の稼ぎ頭。営業がうまい男特有の、話題の豊富さに加え、女の子慣れもしている。
川井がライバルとなるとかなり分が悪い。とはいえ僕にもアドバンテージはある。職場の席が隣で、彼女のメンター的な役割だから、話す機会が結構あるのだ。
だけど残念なことに共通の話題があまりない。年齢がもう少し近かったら、なにかの拍子に盛り上がったりできたりしたのかもしれないのに。
6歳という微妙な年齢差は、それなりにジェネレーションギャップを生む。結局話すことと言ったら、会社の話題になってしまう。
「山田さん」
「へ?!」
いきなり園田さんがこちらに振り向いて話しかけてきたから、びっくりしておかしな声がでてしまった。そんな僕をみて、園田さんはふにゃっと目尻を下げて笑った。あの笑顔で。
「ここの計算がよくわからないんですけど、教えて頂いていいですか?」
「え、どれ?」
動揺しながらも立ち上がって彼女のパソコンを覗き込む。
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