送り梅雨〜荒川美桜〜

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送り梅雨〜荒川美桜〜

 好き、って気持ちはいつ生まれるんだろう? 姿を見るとドキドキして、声を聞くと胸がきゅっとして。そんな風になったきっかけ、全く覚えてないのに。  小嶋(おじま)くんを見ると自分の体温が上がる。小嶋くんの声を聞くと、他の音が全部消える。話しかけることなんかできない。その姿を目で追うことしか……。  男子と普通に話せる咲良(さくら)だったら、こんな風に意識することなく小嶋くんと話せるんだろうか?  まっすぐ見ることができないくらい、眩しい彼。成績優秀、スポーツ万能。明るくてユーモアがあって、背が高くて。目立たない私のことなんか眼中にないだろうな、ってずっと、遠くから見るだけで満足してた。  その彼と初めて話したのは、そろそろ梅雨が明ける、という頃だった。
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