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首が落ちる
暗い道。すれ違う人々はこちらに見向きもしない。
だって全員首が……
「きゃああああああ!」
出社してすぐ、同僚のユミが駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか? 顔、真っ青ですよ!」
「大丈夫……。またあの夢みちゃっただけだから……」
無理矢理口角を上げてみせるが、正直全然大丈夫じゃない。ユミも察しているのか、表情は曇ったままだ。
「心配してくれてありがとね」
私は逃げるように彼女の前を去った。
連日のあの悪夢が、日中でも頭をチラつく。
出てくる人間全ての首が、ボトリボトリと落ちる夢。すれ違うのは首なしの胴体のみ。もはやあれは人間と呼べるものなのか。
考えてみても、他に表現する語彙力は私にはなかった。
人間は夢で記憶を整理していると聞いたことがあるけれど、首が落ちるなんていうスプラッタな光景は、映画でも漫画でも、もちろん日常生活でだって見たことない。
「疲れてんのかな……」
夢をみるのは眠りが浅い証拠だとも聞いたことがあるし、帰りに睡眠導入剤買ってみよう。睡眠薬ではなくても、寝つきが良くなれば何か変わるかもしれないし。
……うん。そうしよう。
私はそう心に決め、その日を乗り切った。
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