2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「なににしたんだ?」
蓮が選んだ菓子ならなんでもいだろう。そう思いながら秀人は蓮からその菓子を受け取った。
「…………菓子って言うより、おもちゃだな」
蓮が選んだのはいわゆる食玩というやつで、ヒーローもののおもちゃに小さなラムネ菓子がひとつ入っているものだった。その特撮ヒーローに最近蓮ははまっているのだとAIに解説されながらテレビを見たのは、つい今朝のことだ。
「まぁ、一個は一個か…………」
スーパーのお菓子コーナーで売っていたものだし、蓮が選んだのだ、これでいいだろう。
そう思いながら買い物カゴへ入れようとした時、アプリの通知音が鳴る。
アプリを使い始めて半日、そのわずか半日でこの通知音が嫌いになりそうだと思いながら、秀人はスマホを見た。
『礼子さんは基本的におもちゃ付きのお菓子は選ばない。それに値段も高い。150円以下の中から選べ』
…………だったら先にそう言えよ…………
いっそアプリをきってしまおうか。今日何度そう思ったかわからない衝動にかられつつ、秀人はお菓子を蓮に手渡す。
「おもちゃ付きはダメだって」
「えー、ダメなの?」
不満そうな声をあげながらも、蓮は菓子を棚へと戻した。そして、再び菓子を選び始めた。
しかし、今度はなかなか決まらない。秀人は早くしてくれよとため息を吐く。
蓮が見つめているのは駄菓子のコーナーだから高いものを選ぶことはなさそうだが、そこに並ぶ菓子は100円に満たない菓子ばかりだ。一つという決まりがある以上、何個か組み合わせるという方法はない。
…………どうせ一個ならもう少し高いものにすればいいのに…………
箱入りの、100円ちょっとのお菓子をすすめてみるか。
めんどうだなと思いながら秀人が棚へ視線を向けると、再び通知音が鳴った。
「今度は何だよ」
いらだちからつい不満が口から出る。いったい次はなにを言われるのか。AIの口調と脳裏をよぎる面影に、年月を経てもなおも委縮しそうになる心を押し込めてスマホを見ると、そこには予想を超える長文が表示されていた。
最初のコメントを投稿しよう!