午後5時45分の楽譜

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        空に滲んだ淡い炎だった。     ビルの隙間から街をほの暗く包み込む。    足元に伸びる影が朧気に揺蕩う。     地平線に口づけする太陽が姿を隠す向こう側。     街に差し込む哀愁は雑踏のせわしなさにかき消された。     その足取りに胸が痒くなる思い出を覗くような時間だ。        急かすような寂しさにいつもの道を逸れ建物の影を縫う。          身を捩って人の間を抜けるとビルと一体の駅へ着く。          普段の電車ではなく一つ上の階から延びる廊下へ向かう。         踊り場に設けられた窓に赤い闇が染みていた。        広間に出ても変わらぬ人混みを掻き分けてひた歩く。         耳を撫でる心地いい音が踊りだしたのはその時だった。
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