短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

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 住んでいる街は照明が多くて、星は(かす)かにしか見えない。  「初めて見た。こんなにはっきり見えるんだ」  二人で見上げる。星はきらきらと輝いて、降ってくるみたいだ。  「こういうのって星月夜っていうんだよ。  星が月みたいに明るい夜ってことなの。ほんとは秋の空に使うみたいだけど、こんな星空見たら浮かぶよね」  私の言葉に、彼も納得するように(うなづ)いた。  「確かにそうだな。  お祖母(ばあ)さんが離れたくないって言うの分かる。こんなすごい場所なら当然だな」  この夜空に感動している今なら、再訪に賛成してくれそうだ。  「次は秋に来ない?いろんな野菜()れるし、星、もっと綺麗だと思うよ」  夜空だけでなく食べ物でも誘う。美味しい物は、来たくなる大きな理由になるはず。  「いいって言ってくれたらね。日帰りでもいい場所だからさ」  まだ家族でないから、遠慮していると思う。でも、星空は、泊まらないと見るのは厳しい。
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