短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

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 「(うえ)……空を見て」  言われるままに顔を空に向けた彼が、驚きの声を上げた。室内があまり明るくないから、すぐに目が慣れたのだと思う。  「うわっ、マジか」  「すごいでしょ。こんなに綺麗に見えるとこって、ここしか知らないんだ」  夜空は暗くなかった。  空一面に散らばる星が明るく輝いている。一つ一つ違う色なのが分かる。銀色が多いけど、赤や青に見える星もある。  「今日、月が出ない日だから余計に綺麗なんだよね」  天文サイトで今日が新月という、月が見えない日だと知ったから、絶対一緒に見たいと思っていた。  「ほんと、すごい。俺、こんな明るい空、見たことない」  手を伸ばすと輝きに届きそうに思える。濃い輝きは天の川だ。指さして説明する。  「あのすごく輝いてるところ、天の川だよ。こういうとこ来ないと分からないよね」
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