短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

2/12
113人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 ***  「ただいま、おばあちゃん」  行くことは連絡していたから、祖母は車の音がすると、すぐに玄関から出てきてくれた。  彼は、家の周りを興味深そうに見回している。畑が広がって、野菜や花が元気に成長していた。  「おかえり、待ってたよ。とうきびやトマト、すぐに食べれるよ」  実ったばかりのトマトに()でたてのトウモロコシを思うと、自然と笑顔になる。祖母は、私の横に立つ彼に頭を下げた。  まだ正式な形になっていないから、彼に会ってもらうのは初めてだ。  「はじめまして。こんな山奥によく来てくださいました。たいしたものはないですけど、ゆっくりしてください」  祖母が笑顔で彼に声を掛けると、彼も深く頭を下げて挨拶した。  「こちらこそ、はじめまして」  私が彼を紹介すると、祖母は本当に嬉しそうに、何度も(うなづ)いてくれた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!