短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

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 ***  「いつも、美味しいって感動してたんです。()でたてはもっと美味しいですね」  彼はトウモロコシが好きだから、祖母から送られてきたら喜んで食べる。でも、()れたてをすぐに茹でて食べるのは、さらに美味しいから感動すると思う。  テーブルにはトウモロコシだけでなくて、真っ赤なトマトと、トゲが痛そうなキュウリが水滴を輝かせている。  私はトマトを手に取って、思いきりかじった。酸味の強い果肉が口の中をさっぱりさせる。店で売っている物よりも酸味があって、子供の頃は砂糖をつけて食べた。今はそのままがいい。  でも、テーブルには砂糖ポッドが置いてある。  祖母の中では、私は今も小さい子供らしいと可笑(おか)しくなる。でも、嫌ではなくて甘酸っぱい気持ちになる。ここに来ると、子供に戻るような気がした。
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