短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

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 ***  夕食は肉じゃがだった。じゃがいもは、やっぱり祖母が作った物。でも、まだ収獲できていないから、昨年のストックになる。来月くらいには新じゃがになって、ただ()でただけでも、びっくりするほどの美味しさになる。  お盆は彼も実家に帰るから難しいけど、秋の連休には一緒に来たいと思った。彼がいいと言ってくれたらだけど、楽しそうな姿を見ると期待する気持ちになる。  「テレビないんですか。それにエアコンもない」  すぐに気づかなかったようだ。  畑や池があって、近くには小川が流れているので、歩くだけで楽しい。そして、窓を開けていると、街とは違って気持ちのいい風が部屋を通っていく。だから気づくのが遅くなっても当然だ。  私も、子供の頃から不自由を感じたことはない。  「ラジオあるからね。ずっとそうだったから、ここに来るとテレビ見たいとか思わないな。  それに、こんなにいい風だから、エアコンもいらないでしょ」
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