短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

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 テレビがないのは、祖父がラジオ好きだったから。祖父は、ラジオと新聞があればいい人で、テレビを必要としていなかった。  私がラジオを好きになったのは、祖父の影響だ。  今は祖父がいなくて祖母は独り暮らし。それでも、ラジオと新聞だけの生活のまま。  さすがに緊急連絡の時に固定電話だけでは心配と、伯父はスマホを渡しているそうだけど、祖母が使うところを見たことはない。  「確かにそうかも。何か見たいってわけじゃないから、テレビ見るのって習慣か。ラジオもいいな。  それに、エアコンと違って身体に良さそうな風だね」  二人で暮らす部屋には当たり前だけど、テレビもエアコンもある。普段は意識しないけど、祖母の家に来ると、自然の風の良さが思い出される。  「ニュースある時はテレビあったらいいのにって思うけど、そのくらいかな」  テレビがないし、窓が開いているので、いろいろな音が外から聞こえてくる。  畑にいるだろう虫の声。遠くからカエルの鳴く声が響く。そして、窓に吊り下げられている南部風鈴の澄んだ音。  街にいると聞こえなかったり騒音にされるけど、ここでは当たり前のように耳に届いてくる。
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