短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

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 ***  祖母は、人工的な光りがあまり好きでないと、電灯を()けるのは最低限だ。だから、食事が終わると灯油ランプがほのかな(あか)りで室内を照らしている。  「なんか落ちつくな」  揺らめく炎は心を穏やかにすると思う。さすがに、バスルームやトイレは電気を()けているけど白熱電球色なので、やっぱり心が落ちつく。  オレンジ色の光りは、気持ちを安らかにすると思う。  三人ともお風呂に入り終わると、本当にのんびりした気持ちになる。  「ねぇ、外に出てみない?」  今日は一日中晴れていた。だから、きっと見られるはず。  「いいよ」  笑顔で(うなづ)く彼に、笑みを返すと私は祖母に声を掛けた。  「ちょっと外に行ってくる。遠くに行かないから大丈夫」  「ランタン持ってく?」  首を振った。これから見たいものは灯りがあると少し困る。  「なくていい。家の周りだから」
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