短編集~プリズム 夏の初めの星月夜

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 玄関でサンダルを()くと、そのまま外に出た。外は暗いので、彼は少しとまどった様子だ。  「真っ暗になるけど大丈夫?」  心配は分かるけど、私は安心してもらうように返した。  「大丈夫。近くだし、暗くないから」  微妙に(うなづ)いて彼も外に出たので、手を繋いで畑の方向へ歩く。  「え?どこ行くの?ほんと真っ暗だけど」  祖母の家は街の端にあって、ほとんど人家がない。父や伯父も心配している。でも、祖母は引っ越すつもりはないと言った。ここを離れたくないと。  私はここが好きだから、祖母のことは心配だけど、ずっと住んでいてほしい。  「もうすぐ。この辺りかな……」  言いながら足を止めた。彼は私にぶつかりそうになって、慌てて止まっている。  「あ、ぶない。急に止まるとぶつかるよ」  でも、私を押さないように止まってくれる彼は、すごく優しいと思う。私は彼の肩を軽く叩きながら言った。
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