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「結婚式は花嫁のためにあるんだよ。新郎は添えもの。本当に、綺麗だ」
笑顔でそう言ってくれるから、嬉しくなって私も微笑み返した。
「ありがとう」
「……あー、いま意味分かった」
「なに?」
「この部屋入るとき、注意された。お化粧崩さないで下さいねって」
「え?」
意味が分からず聞き返すと、そっと柔らかく抱きしめられる。
「だから、おでこにチューで我慢する」
「あ……」
おでこに柔らかい感触がして、幸せが増してゆく。そうして抱きしめられたままでいて、でも少しだけ言いたくて、そっと耳元に囁いた。
「今日も、雨だね」
「まだギリギリ梅雨明けていないもんな」
日取りが七月上旬に決まった時に、なんとなく予感はしていた。多分私達、雨男と雨女のカップルなんだ。自分達だけなら良い。けれど結婚式が雨というのは、せっかく来ていただいた招待客に悪い気がする。
その考えに沈みそうになった瞬間、
「恵みの雨だ」
そう囁き返された。顔を上げて彼を見ると、なんだかワクワクした表情になっている。これは、私が初めて彼を見た時のあの雰囲気に似ている。
「そうだね」
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