後編:あんずジャム付きパンな彼女

10/11
120人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
 戻ると彼女が布団に包まっていた。白い掛け布団の海の中、安心しきった表情で微睡む彼女がいる。  不意にまた、あんずジャム付きパンに似た白猫のことを思い出した。そっと布団に滑り込み、彼女のうなじに鼻を付ける。 「甘えてる」  くすくす笑って彼女が俺を抱きしめる。 「そっちだって」  言い返して頬を撫ぜると、彼女の顔をじっと見つめた。視線を感じた彼女がそっと目を開き、見つめ返す。 「どうしたの?」 「……いや、ちょっと反省タイムっていうか」 「反省?」 「なんか俺、ねちっこくないか? と思って。振り返るとどうもしつこく舐め過ぎている様な気がする」 「はぁ」  なんと返していいのか分からない表情で、彼女が相槌を打つ。確かに突然反省タイムに入られたら、戸惑うだろう。  ただ、なんだかこのタイミングで確認したかった。多分俺、これからもずっと彼女を見れば、あんずジャム付きパンを連想するし、うなじの匂いを嗅ぎたくなるし、舐めて堪能したくなる。  自分が思うよりももっと真剣に、彼女のことを見つめていたらしい。最初は戸惑うばかりの表情だった彼女の瞳が揺れ、そのうち何故か顔が赤くなってきた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!