いつも雨が降る

2/13
前へ
/32ページ
次へ
 二人だけの関係が、ここに至って両家への紹介から始まり、色んな人を巻き込んでの社会的なものとなる。面倒な決めごとや外部からのちゃちゃ入れ、お互いの認識のズレからの大喧嘩。事務的作業。不安と期待。そんなものを乗り越えて、私達は晴れて結婚式の日を迎えた。って、晴れて?  ホテルの控室、窓ガラスから見える景色に息をつく。曇った空から雨が降っていた。 「失礼します」  コンコンと扉がノックされて、係の人から呼びかけられる。 「新郎様がいらっしゃってますが、お通ししてもよろしいですか?」  そう聞かれて、隣に立つスタッフさんを仰ぎ見た。 「お支度は終了しましたので、私達はこれで」 「あ、ありがとうございます」  にこやかな笑顔のまま去っていかれ、私だけとなった控室に彼が入ってくる。ゆったりとした歩幅。スラリとした手足に、タキシード。私の好きな彼の独特な間合い。 「綺麗だ」  私が口を開く前に、彼に先に言われてしまった。 「そっちこそ」  やっぱり背が高いと、フォーマルって映えるんだなぁと、つい見惚れてしまう。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加