120人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
前編:棒付きキャンディの彼
休日明け月曜日の朝は、いつも憂鬱な気分に満ちている。曇り空なら特にそう。
気象庁は一度出した梅雨明け宣言を撤回し、空がいつ晴れるのか様子を窺っている。道行く人たちの手には、傘。今日は降ったり止んだりを繰り返すらしい。
あーあ。休みたい。
駅から出た途端、げんなりとした。駅前商店街からオフィス街に向かう道は、まるで羊の群れのような会社員の列。みんな同じ方向へ歩いてゆき、最後はそれぞれの会社へと吸い込まれてゆく。
もちろん私もその一人。毎日毎日、同じことを繰り返す。
思わず逃げるように視線を空へと向けたけれど、あいにくの曇り空。道路に沿って切り取られた灰色の空間は、まるで私に重くのしかかってくるようだった。
仕方ない。
心の中でつぶやいて、歩き出す。だってご飯食べなきゃ死んじゃうんだもん。自分で稼がなきゃ、お金は手に入らない。それじゃあお前は、専業主婦になれば家に落ち着いていられる性格なのか? って聞かれても、困ってしまうのだけれども。
最初のコメントを投稿しよう!