04 - お花見サンドイッチ

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 私は早速両手を合わせた。いつもの合図、「いただきます!」を彼より先に言い放って、すぐさまサンドイッチに手を伸ばす。  どれから手に取ろうかと迷ったが、最初だからと近くにあった卵サンドを手に取った。卵サンドと言っても、よくあるゆで卵を潰してマヨネーズと和えたようなアレではない。黄金色に輝く美しい厚焼き卵が、ふわふわのパンとレタスの間に挟まれているソレである。 「わ、すごい! 卵焼きがふっわふわ……ぷるぷるしてる……!」 「いいだろ、自信作だぞそれ」 「おおー……!」  手に持った感触だけでも柔らかくてふわふわなのが分かる。そのくせに重量感はずっしりと重たい。まだ口に入れてないのに、既に美味しい。 「いただきます!」 「どーぞ」  瞳を輝かせ、黄金色のそれに私は勢いよくかぶりついた。ふわふわ卵とシャキシャキレタスが、マヨネーズの酸味、そしてマスタードの香りと合わさって超絶に美味しい。もうそれしか言いようがない。美味しい! 「天才です!」 「……いや、だから大袈裟なんだよ。卵焼いて挟むだけだぞ、それ」 「その卵が天才的においしいです!」 「……はいはい、ありがとな」  やはり照れているらしい彼は、すぐに目を逸らしてしまう。褒めちぎると途端に彼が大人しくなるという事を、私は最近新たに学んだ。まあ、それに関しては私も人のことをとやかく言えないんだけれども。  あっという間に卵サンドを平らげた私は、今度はハム、その次はトマトと、次々に彼お手製のサンドイッチをお腹の中に収めて行く。パンってあんまり満腹感を得られないって昔どこかで聞いたことがあるけれど、本当にそうかもしれない。どんどん口の中に入れてしまって、止まらないもの。  そうこうしている間にタッパーの中身はすっかり無くなってしまった。辛うじて残っているのは、ポテトサラダの挟まれたサンドイッチただ一つ。それをじっと見つめる私の食い入るような視線を恭介さんはくすりと笑って、「食べて良いよ」と言ってくれた。 「う……で、でも……」 「お前のために作ってんだから、食えよ」 「……」  お前のために、とハッキリ宣言されて、異性への耐性が乏しい私はかあっと頬を火照らせてしまう。「んだよ、またチーク付けすぎてんぞ」とニヤニヤ笑う彼をむっと睨んで、私は最後のサンドイッチに手を伸ばした。 「いただきます!」 「はいどーぞ」  なんかさっきもこのやり取りしたような、と既視感を感じつつ、私はサンドイッチに口を付ける。ぱくり、一口。その時点で私の瞳がキラキラと輝いたのだろう、目の前の彼が呆れたように息を吐いたのが分かった。
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