04 - お花見サンドイッチ

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 じゃがいもとベーコンだけの、具材は至ってシンプルなポテトサラダ。スーパーのお惣菜コーナーにあるようなポテトサラダは少し甘いけど、彼の作るポテトサラダは甘みよりも、おそらくマスタードのものだと思われる酸味の方が強い。  ブラックペッパーの味もピリリと効いていて、なんだか家庭の味というより、お洒落なフレンチのお店で出てきそうな大人の味だった。まあ、そんなお店行った事ないんだけど。 「美味しいです!」 「そ?」 「はい! きゅうりの入ってないポテトサラダって初めて食べました!」 「今度入れて作ってやろうか?」 「ん……! それも美味しそうだけど……! でもこのシンプルなポテトサラダも好きです!」 「何でも良いんじゃん」  頬杖をついて彼が笑う。しかし不意に彼は顔を逸らし、かと思えば「へっくしゅん!」と豪快なくしゃみが静かな川沿いに響いた。ずず、と鼻をすする彼は、寒そうに身を縮めてパーカーのフードを被る。 「さむ……」 「あ……ごめんなさい、ゆっくり食べちゃって。寒そうですよね、帰りましょうか」 「いいよ、ゆっくり食べてて。それよりちゃんと腹一杯になった? 少ねーだろ、いつもより」 「……うーん……」  確かに、量はいつもより少なかった。けれどここで「足りませんでした」とはっきり言えるほど、私の(つら)の皮は先ほどの卵のように分厚くない。とりあえず私はにこりと微笑んで、彼に頷く。 「はい、お腹いっぱいです」 「嘘だな。コンビニ寄るか」  なんてこった、速攻でバレた。  表情を強張らせた私にべえっと舌を出した彼は立ち上がり、空のタッパーをリュックの中に戻す。「ほら、行くぞ」とレジャーシートを畳み始めた彼に急かされるまま、私もクロックスに足を通して立ち上がった。  もごもごと動かしている口の中で美味しいポテトサラダの味を噛み砕きながら、私は彼の背中を追いかける。
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