04 - お花見サンドイッチ

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「……あーあ、屋台の焼きそば食いたかったな。あとタコ焼き」  残念そうに吐きこぼした彼の隣で、ようやく最後のサンドイッチを飲み込んだ。名残惜しそうな彼の瞳の先には、おそらく数日前まで出店が並んでいたであろう、閑散とした河川敷。 「焼きそば、好きなんですか?」 「いや、別に好きでも嫌いでもねーけどさ。祭りとかで売ってる焼きそばって、なぜかやたら美味く感じるじゃん? あの雰囲気が好きなんだよ」 「ふうん……?」  彼の言い分には、確かに一理ある。けれど、たとえば今日、この場に焼きそばの出店が並んでいたとして。それを購入して食べたとして。果たしてその雰囲気だけで、私は「美味しい」と感じることが出来たのだろうか。  ……だって、そんなものよりも。 「……私は、恭介さんの作ったサンドイッチの方が、好きですけど……」 「…………」  ぽろりと本音を口に出せば、こちらを見る彼の目がまんまると見開かれた。その後戸惑ったようにその視線が泳ぎ、ゆるゆると逸れて、彼の顔は明後日の方向を向く。 「……バカ、お前……。そういう不意打ちは、ずるいだろ……」  顔を逸らしたまま首元を掻いて、彼はぽつりと呟いた。ピアスの付いた耳がほんのりと赤く染まっているのは、きっとライトアップの光のせいではないだろう。  最大級に決まりの悪そうな背中を見つめて、私の口元は自然と緩んだ。なんだか、ちょっと彼に勝った気分。 「今日は私の勝ちですね?」 「……勝手に言ってろ、バァーカ」  (いささ)か乱暴に返されたその声は、ほんの少しだけ、嬉しそうだった。  . 〈本日の晩ご飯/サンドイッチ〉
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