05 - 茶碗蒸し

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 くすくすと笑い始めた私に、恭介さんはむっと口元をへの字に曲げた。 「なんだよ。抹茶味が不満か?」 「ふふっ……、ううん、好きですよ抹茶。でも──」  彼の手元で汗をかく抹茶味のアイスクリームをそっと受け取り、私は悪戯っぽく微笑んだ。 「コンビニで食べ物買ってるじゃん、って思っちゃって」 「……アイスは仕方なくね?」  むす、と唇を尖らせる彼が拗ねたように言う。私は受け取ったアイスクリームをテーブルの上に置き、最後の一口となった茶碗蒸しをスプーンですくい上げた。  口の中で溶けて行く、お出汁と卵の優しい味。  この美味しさのせいにして、怖い声を出していた両親のことも、あの時のことも、全部忘れてしまおう。そうだ、きっと、それがいい。  だって今は、彼とご飯を食べるこの時間だけが、私のすべてを作り上げているんだから。 「──ごちそうさまでした」 「……普通、デザートまで食ってから言うんじゃねーの?」 「あっ、確かに」  . 〈本日の晩ご飯/茶碗蒸し〉
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