06 - バーニャなんとか

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 そこは、モノトーンを基調とした家具の揃えられたシンプルな部屋だった。私の部屋と同じ、和室6畳間。なのに雰囲気は全然違う。  グレーのシーツが掛けられた簡素なパイプベッドに、黒いローテーブル。その上には同じく黒いシンプルな灰皿。畳の上には薄いカーペットが敷かれていて、本棚や収納箱は中身が見えないように薄手の布できちんとカバーが掛けてあった。  ノートパソコンにはよく分からない英単語──おそらくバンド名──の記されたステッカーがいくつか貼ってあったり、壁にもよく知らない海外アーティストのカラフルなポスターが貼ってあったりするけれど、それ以外は全体的に無地のモノクロで統一されている小綺麗な部屋。そんな印象。  恭介さんは服装も普段からシンプルだから、柄物とかはあんまり好まないのかもしれない──そんなことを考えながら、私はまじまじと彼の寝室を観察してしまっていた。 (……なんか、いい匂いするし)  柔軟剤の匂いだろうか。どこからともなく、甘くていい香りがする。  部屋は綺麗だし、料理は上手だし、いい匂いするし……。  よく考えたら恭介さんって、その辺の女の子よりもよっぽど女子力高いよなあ、なんてちょっぴり惨めな気分になりながら、私は座椅子の上に腰を下ろした。 (あーあ……)  ふう、と思わずこぼれ落ちた溜息。  私みたいな何のこだわりもない女の子、ロクでも無い女だと思われたりしてないかなあ……してるんだろうなあ……。そんな被害妄想に耽っていると、ぐうう、と私のお腹が大きな音を立てる。図々しいお腹だ、ほんと、単純なやつ。  今しがた音を立てたお腹を、私はぎゅっと両手で押さえ込んだ。からっぽのお腹。ぐうぐう、音が鳴るだけの。 (……なんだか、眠たい……)  柔軟剤のいい香りと、トントントン、と野菜を切る一定のリズムが、心地よく耳に届いて。徐々に重たくなり始めた瞼をそっと素直に閉じてみたら、あっという間に意識が微睡(まどろ)み始める。 (……ねむ、い……──)  そのままとっぷりと、私の意識は夢の中に沈んでしまったのであった。
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