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01 - オムライス
ふんわり、まあるく焼きあがった黄金色の輝き。お洒落な白いフライパンからするりと滑り落とされたそれは薄橙色に色付いたチキンライスの上にバウンドし、ふるんと柔らかそうな表面を震わせた。
真っ白なお皿とチキンライスの上に乗る、まあるいかたまり。今まさにその輝きを作り上げた彼の手によって、それは丁寧にテーブルへと置かれる。
「はい、出来た。オムライス」
「……ふわあ……!」
思わずじゅるりと涎がこぼれそうになり、私は慌てて口を閉じる。気を取り直して再び目の前に置かれたオムライスを見下ろした私は、つい胸を高鳴らせた。
だって運ばれてきたそれは、私の知っているオムライスではない。よくある薄焼き卵でご飯を包んだアレではなくて、なんだかオシャレなレストランで出てくるような、まあるい大きな卵のかたまりがご飯の上で黄金色に輝いているそれだったんだもの。
まるで子どものように目を輝かせている私の正面で「何その間抜けな顔」と笑っている彼は、一旦踵を返し、そしてまたすぐに戻って来た。
その手には色鮮やかな野菜が宝石のように散りばめられたサラダと、美味しそうな匂いのする小鍋。
「有り合わせで作った。デミグラスソース」
「……えっ、オムライスってケチャップで食べるものじゃないんですか?」
「ケチャップがいいならそれでも良いけど?」
彼は小鍋を持ったまま、「どっちにする?」と問い掛ける。私はじっと小鍋を見つめた。ふわりと漂う湯気から香るソースの香りに、思わずごくりと喉が鳴る。
「せ、せっかくなので、デミグラスソースで……」
「ん、おっけ」
ふっと目尻を緩めて、彼は小鍋を傾け、デミグラスソースをまあるい卵の上にとろりと垂らして見せる。黒く輝くソースがチキンライスの周りを囲うように広がって、ぐう、と私のお腹は素直に音を立てた。
この匂いは何だろう。バターかな?
勝手にお腹が空いちゃう、魔法みたいな匂い。
「フォークがいい? スプーンもいる?」
「あ、えと、うーん……! フォークだけで大丈夫です……!」
「ん」
何もかも頼りっぱなしの私に嫌な顔一つせず、彼はてきぱきとカトラリーケースにフォークとスプーンとお箸を入れた。ああ、フォークだけでいいって言ったのに、と焦燥するが時すでに遅し。彼は気遣いまで完璧なのだ。その後、彼は取り皿と自分の分のオムライスも運んで来て、ようやくその忙しい足が動きを止める。
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