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向こうは視力が弱いのか、じっとしているイオとガットが今は見えていないらしい。
動きが俊敏でない事を祈りつつ、ガットは足に力を込めながら好機を計った。
怪物がふと立ち止まり、こちらから視線を逸らした瞬間ガットがイオへ合図を送る。
「今だよっ。行こうっ。」
掛け声と同時に地面を蹴り、二人同時に全力で走り出した。
近くで見ると更に恐ろしさが増し、イオは震えそうになる筋肉を走る事へ集中させる。
そしてこちらに気付いた怪物が棍棒を握る手に力を込め、空気を揺るがす雄たけびを上げた。
「止まらないでっ。そのまま真っ直ぐっ。」
怪物に怯えた顔を向けたイオにガットが声を掛け、視線を向けさせる。
「大丈夫。イオのが僕より走るのは得意なんだから、その調子で頑張って。」
走りながらも微笑むガットに励まされ、イオは前だけを見つめ怪物の雄叫びから耳を塞いだ。
予想通り怪物は動きが緩慢で、イオ達標的の方へ身体を向けた時点でかなり距離を離している。
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