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プロローグ
薄い茶色の癖毛が帽子を跳ねさせ、それを落ちないよう両手で押さえながら、小さな歩幅で息を切らせて走る。
抜けるような青空には雲が点々と浮かんでいて、いつもならお菓子を幾つも連想しながらゆっくり進む道を、今日は前だけを見つめ、目的地へ急いだ。
「やぁ、そんなに急ぐと転んじゃうよ。」
顔見知りの店主が、前を通り過ぎる彼に優しく声をかけた途端、それが合図かのように石に躓き、勢いよく顔から地面に着地する。
思わず駆け寄る足音に、ゆっくりと立ち上がりながら、ルトは涙目で眉間に皺を寄せた。
「もう、ガットさんが話し掛けるから転んじゃったでしょ。」
服と鞄に着いた汚れを素早く払い終えると、思わぬ冤罪に困惑する彼を置いて、再び全力で駆け出す。
村を抜けて緩やかな丘を登りきり、息を整えながら左右を見渡すと、草の生い茂った土手の途中に、伸ばした足が四本見えた。
自分の背丈と変わらない草の合間から見え隠れするその足に向かって、ルトは即席で作った土団子を数個放り投げる。
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