【AXE】

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「わかんない。けど、あれに見つかったら駄目なのは分かる。」 「そんなの僕にだってわかるよ。あ。」 小さな茂みにやっと隠れているこの状況で、ルトは何やら足元を見回しどこかへ歩き出そうとする。 葉が音を立てる前に捕獲できたが、もぞもぞと動き未だ首だけを一点に向けていた。 「何してんの。見つかったら俺はルトさん転がして身代わりにしてでも逃げるからな。」 「酷い。だったら僕、この場で叫んでどっか隠れる。」 小声の醜い争いが、風の揺らす葉の音でかき消される中、風前の灯だった扉が完全に破壊される音が二人に届く。 首ごと視線を集中させると、丁度その時大男が室内へ踏み込んだ。 先程の人影を思い出したイオは、混乱する頭で正義感と恐怖を戦わせる。 せめてと何か武器になるような物を探すが、鈍った思考ではルトを投擲する以外の術が浮かばない。 自分に向けられた不穏な視線を感じとったのか、ルトはイオから一歩離れ警戒態勢を取るが、その後ずさった片足が、乾いた小枝を何本か踏みしめた。 破壊音が響いていた先程までとは違い、今は風も止み木々の葉が僅かにざわめいているだけだったせいか、折れた小枝の音が想像以上に鼓膜を震わせる。
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