【AXE】

7/15
前へ
/386ページ
次へ
ほぼ家の中へ入りきっていた大男は、歩みを止めて上半身だけを後方へ向けた。 今は無いが、イオの感覚では耳から尻尾の先まで全身の毛が逆立っている。 白い仮面を着けた大男が、明らかにこちらへ関心を向け、その殺気の標的を変更していた。 「ルトさん、これ本の中で死ぬとどうなんの。」 「え、知らない。」 「途中で脱出とか無いの?」 「うん。そうみたい。」 「説明書全部読んでないのかよ。」 「だって字ばっかで飽きちゃったんだもん。」 拮抗していた正義感と恐怖は、恐怖の完全勝利で幕を閉じる。 抗える術が何も無いこの状況で、僅かな希望も相方によって粉砕された。 今選べる選択肢は諦めた上での死か、固まる身体を奮い立たせての逃走かしかない。 本の中という特別な条件の死が起こす結果が、ただこの世界から排出されるだけなら、このまま大男と対峙し、討死するのも体験としてはありだと考える。 だが自分をここへ連れてきたルトの答えは、結果が排出ではない可能性を残す頼りないものだった。 「逃げるぞ。あんなの無理だろ。いきなりボスが出てくる冒険とかふざけんな。」 「あ、あれ見てイオ君。」
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加