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ゆるめに作った土団子は丁度彼等の頭上で崩れ、土のにわか雨を降らせた。
二重の叫び声が風に乗り、満足気に軽やかな足取りで土手を下る。
「イオくん探したんだよ。あのね、面白いもの見つけたんだ。」
「待て。その前に俺に話がある筈だが。」
片方は土が目に入ったようで、叫びながら転がり回り、彼とは別の眼鏡をかけた男が、ルトの襟首を後ろから掴んだ。
彼は眼鏡のおかげで目潰しは避けられたものの、短髪の黒髪を始め全身が土にまみれている。
口に入った土を吐き出しながら、切れ長の目に怒りを含み、笑顔で掴んだ襟首を引き寄せた。
怒気を孕んだ低い声音を意にも介さず、ルトは不満そうに無理矢理合わせられた視線を逸らす。
「僕はイザに話なんてないもん。」
「なるほど。そんなに死にたいか。」
自身の牧場で鍛えた、体格に似合わぬ腕力にものをいわせ、イザと呼ばれた男はゆっくりと土手を登りだした。
それが脅しでは無いことを過去に経験済みのルトは、本意ではないが謝罪の言葉を口にする。
幾度目かの大きな謝罪の後に、締まっていた襟が緩んで草の上に投げ出された。
「次は首だけ残して土に埋めるからな。」
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