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不穏な呟きを残し、彼は二人を置いて村へと戻る。
足音が消えたのを確認し、ルトは一緒に残された黒猫に近付いた。
「イオくん大丈夫?」
「ぶっ殺すぞ」
今の感情を全て集約した一言を吐き出した黒猫は、長い尻尾で地面を強く叩く。
背を向けた彼の背後で、ルトが嬉々として鞄から何かを取りだした。
その様子を横目で観察していたイオの鼻先に、一冊の本が突き出される。
ハードカバーで古臭い装丁のその本には、本にあるべき題名の記載が無く、題名があるべき場所は空欄になっていた。
「物置で探検してたら、箱の中に入ってたんだ。でね、一緒に入ってた紙にね、凄い事が書いてあったんだよ。」
目を輝かせたルトから本を受け取ると、イオは興味無さげにページを巡る。
表紙が中途半端な本の中身は、合わせたように中途半端な内容だ。
何ページかおきにタイトルのような文字が書かれており、それ以外は白紙になっていて、書かれている文字も自分の知っている言語ではない。
子供向けの玩具で本の中で色々な体験が出来るものは見た事がある。
ルトの興奮具合の割には降り注がれた土の恨みを超えるようなものではなく、仏頂面のまま本を返した。
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