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言っている事はもっともなのだが、イオの体力を回復するのはそんな言葉ではない。
聞く相手を間違えたと不貞腐れたが、すぐに自分の鼻が反応した匂いでその事が頭から消え失せる。
「なんか焦げ臭いぞ。あっちの方角だ。」
イオにしか届いていなかったが、その匂いに集中すると聞きたくない音も聞こえてきた。
徐々に曇っていくイオの表情を心配し、先を歩いていたガットもイオの傍に戻る。
「どうしたのイオ、大丈夫かい?」
イザもイオに集中しているが、彼が何を聞いているのか見当がつかない。
「行ってみるか。焦げ臭いなら何か火を使ってるんだろ。」
火元があるのなら、ルトのいる建物がある可能性もあった。
「そうだね。イオ、とにかくその場所の近くまで行ってみよう。」
ガットもイオを気にしつつ進むよう促すが、イオの足はその場に留まり続ける。
「行かないほうがいい。悲鳴が聞こえる。ルトさんのじゃないけど。」
イオの耳には、複数の誰かが上げる断末魔が途切れる事無く響いていた。
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