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「おい、本当にこっちで合ってるんだろうな。」
大分進んだと思われる時点で、苛ついた声のイザが足を止める。
「合ってる、と思う。」
イオが自信なさげに答え、信頼するにはいまいちな態度にイザの舌打ちが出た。
ガットは時折イオを振り返って確認しながら進んでいたが、一向に何の変化も見られない景色に不安はある。
イザとガットにはまだイオの察知した匂いもその片鱗も見つけられず、休憩も兼ね一旦輪になり腰を下ろした。
「イオ、まだ匂いはするの?」
案内役の不安気な態度にガットが優しく問い掛け、一方から向けられる冷ややかな視線を遮断する。
「するんだけど、全然近くなってる感じがしないんだ。ずっと同じ場所で嗅いでるような気がする。」
三人共足を前に進めているのだから当然匂いの元との距離は変化する筈で、濃くも薄くもならないなどあり得ない。
「移動してるのかな。悲鳴の後に何か聞こえた?」
その匂いの元が移動している可能性もあるが、ガットの案はイオに否定された。
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