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「別に何も聞こえない。今は完全に匂いだけだ。」
イオの答えで、ガットは腕を組み困ったような表情で黙り込む。
他に匂いとの距離が縮まらない可能性があるとすれば、三人が最初にいた場所から動いていないという事実だ。
しかし同じような景色とはいえ確実に地面を踏みしめ歩いていたし、休憩を提案するだけの疲労感もある。
「いつ着くかわからないけど、進むしかないかな。ずっと立ち止まってても意味無いだろうし。」
休憩はもう少し続けるつもりだが、今はイオを信じて進むことしか選択肢が無かった。
当てもなく彷徨うよりはましだという程度だが、微かな目標があるだけでも感じる疲労はかなり違う。
「ごめん。俺先に行って見てこようか?」
責任を感じてか、イオが立ち上がりかけるもガットはそれを押し留めた。
「それは駄目だよ。何があるかわからないんだから一人で行動するのは避けた方が良い。」
納得したイオが再び腰を下ろすが、交代するようにイザが立ち上がる。
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