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急いで彼の見ている方向へ目を凝らしたガットにはまだ何も見えなかったが、不穏な空気を感じると同時に足元から微かな振動が伝わる。
一定の間隔で伝わるそれは、徐々に強さを増していった。
「イオ、イオっ。」
囁いた一度目は軽く無視をされ、強めに呼ぶとガットはイオの手を掴む。
掴んだと同時に、ガットはイオを引っ張りながら元来た方向へ全力で駆け出した。
「わっ、ちょっ、ガットさん、もう大丈夫だから手離してくれっ。こけるっ。」
途中まではガットに手を引かれていたイオは、別世界に飛んでいた意識が戻ってきたのかガットの隣で自分の足で走り始める。
イザの立てた目印まで引き返しそこで漸く立ち止まったガットが、後ろを振り返りながらイオの様子を確認した。
「何あの振動。なにかがこっちに向かってきてたみたいだったけど、絶対まずい気がしたから逃げちゃった。」
姿が見えないほど遠くから歩く振動を伝えられるような巨体に、棒切れ一本で立ち向かうのはガットといえど命知らずが過ぎる。
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