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「これだからイオ君は。話は最後まで聞かなきゃ。」
首を振りつつ肩をすくめるその姿に、尻尾を振りかぶって彼の帽子を明後日の方向へ吹き飛ばした。
慌てて帽子を取りに行くルトを尻目に、先程一緒に見せられた一枚の紙を取る。
「今までにない、迫真の冒険体験ができる。」
「凄いでしょ。非売品なんだって。」
お気に入りを回収したルトは得意気だが、いまいち状況が把握出来ない。
「するってえとこの本で、自分の選んだすごい冒険が出来るってことか。」
「そう。一個につき一回だけみたいなんだけど、全然使われてないから沢山できるよ。僕達でやろうよ。」
最早楽しい玩具を手に入れて喜色満面のルトを相手に、普段なら彼以上の乗り気を見せるのだが、何故か野生の勘ともいえる不安感が付き纏う。
「俺、何か嫌な予感がするんだけど。」
「明日朝からやってみよう。僕が迎えに行くから寝坊しないでね。」
勝手な約束を取り付けられ、止める間もなく走り去る後ろ姿に、イオはもう一度尻尾を地面に叩き付けた。
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