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湧かない興味を無理矢理起こし、イオはゆっくりとページを巡っていきながらふと気付く。
「選ぶも何も、内容分かんないじゃん。」
「うん。だから勘で選んで。」
「いやいや、だったらルトさんが選んでよ。」
「いいから選んで。早くしてよ。」
言いたい事が溜まりに溜まり、力の限りに叫びたい衝動を抑えながら、先程より早い速度でページを巡った。
少しでも短い時間でこの不安感から解放される事を願いながら、あるページで手を止める。
「これは俺の勘で多分早く終わると思う。そして俺は早く帰れる。良いことずくめだ。」
「じゃあこれ以外にしよ。」
一旦本を閉じようとする手を尻尾で素早く押し留め、巻き付けたまま件のページの上へ叩きつけると、自身の肉球もその隣へ並べた。
何も起きないかと思われた一瞬の間を置いて、本が突然眩い光を放つ。
「わわわわわわっ。」
「うわぁぁぁぁぁ。」
本を中心に放たれた放射線状の光が円となり、二人の体を悲鳴ごと飲み込んだ。
飲み込まれた彼等の姿が見えなくなると同時に光の円は本と共に消え、辺りを普段通りの静かで穏やかな風景に戻す。
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