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高い場所から落とされたのか、ルトが地面へ転がるのに少し遅れてイオも着地した。
「ここどこ。何か変な感じ。」
「俺に聞かれてもわかんないよ。本の説明通りなら本の中じゃないの。」
立ち上がった二人が辺りを見回すも、見たことの無い空間が広がり頭の疑問符が増殖する。
ふとイオの視界の端に映ったルトが、普段より大分低い位置にいるようだ。
「え、イオ君、なの?」
少しだけ目の合ったルトが一旦視線を外し、勢い良く再び振り向く。
「え、生まれてこの方ずっと俺だけど。」
驚愕しているルトに近付こうとして、ふと自分が二足歩行な事に気付いた。
ゆっくりと地面から伸びる長い足先から辿ると、そこには黒猫ではなく、猫毛の柔らかい髪を月に照らす、背の高い人間の男が立っている。
「え、何これ。何これすげえじゃん。」
前後左右の自分の姿を確認するイオの正面に、ルトが興味津々で向かい合った。
普段目線を合わせる時と、首の角度がお互い反対でどこかぎこちない。
「何で。何でイオ君だけそんなんなの。何かちゃんと服も着てるし。ずるいっ。」
「全裸ならましみたいな言い方すんな。」
地団駄を踏むルトは、どこにも変化のない地面に近い普段通りの姿である。
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