【AXE】

3/15
前へ
/386ページ
次へ
高い場所から落とされたのか、ルトが地面へ転がるのに少し遅れてイオも着地した。 「ここどこ。何か変な感じ。」 「俺に聞かれてもわかんないよ。本の説明通りなら本の中じゃないの。」 立ち上がった二人が辺りを見回すも、見たことの無い空間が広がり頭の疑問符が増殖する。 ふとイオの視界の端に映ったルトが、普段より大分低い位置にいるようだ。 「え、イオ君、なの?」 少しだけ目の合ったルトが一旦視線を外し、勢い良く再び振り向く。 「え、生まれてこの方ずっと俺だけど。」 驚愕しているルトに近付こうとして、ふと自分が二足歩行な事に気付いた。 ゆっくりと地面から伸びる長い足先から辿ると、そこには黒猫ではなく、猫毛の柔らかい髪を月に照らす、背の高い人間の男が立っている。 「え、何これ。何これすげえじゃん。」 前後左右の自分の姿を確認するイオの正面に、ルトが興味津々で向かい合った。 普段目線を合わせる時と、首の角度がお互い反対でどこかぎこちない。 「何で。何でイオ君だけそんなんなの。何かちゃんと服も着てるし。ずるいっ。」 「全裸ならましみたいな言い方すんな。」 地団駄を踏むルトは、どこにも変化のない地面に近い普段通りの姿である。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加