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片や四足歩行の生物だった相棒は、何故か自分の倍以上の等身を手に入れていた。
劣等感が刺激され、新しい世界を楽しむどころではなくなっている。
「落ち着けって。じゃあいつも通りにするよ。」
「きもちわる。」
勝手知ったる猫の動作に戻るが、人の姿だと上手くいかず、奇怪な生物が誕生した。
笑いが込み上げ少し周囲に気を回す余裕が生まれる。
二人のいる場所は、月明かりだけが頼りの木々が生い茂る森の中のようだ。
ある程度舗装された道が通っており、遠目には家のような屋根も見える。
「ここはどこなんだろ。道はあるけどどっちに行けばいいのかな。」
「とりあえず家の方に行ってみるか。冒険だったらまず人に会わなきゃっしょ。」
歩き出したイオの後に、ルトは小走りで追いついた。
家には電気がついていて窓から光が漏れていたが、もう少しで家の中が見えそうな距離に近付いた時、突然光が消え暗闇に包まれる。
「あれ、もう家の人寝ちゃったのかな。」
「しっ。ルトさんちょっとこっち。」
立ち止まるルトの手を引き、イオは近くの茂みへ潜り込んだ。
話しかけようとしたルトの口を手で押え、家の方角を凝視して微動だにしない。
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