4人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
第一話 夕暮れの教室
ん?
慶太は眠りから覚めた。
体を起こすと数学の教科書が目の前にあった。
「ああ、俺は数学の時間から寝てたんだな」
教室の時計は五時前を示していて、窓の外にはオレンジ色の景色が広がっていた。
吹奏楽部の合奏と運動部の掛け声が遠くで混ざって、教室は独特なゆっくりとした時間の流れを作り出していた。
ふと、女子の笑い声が聞こえ、教室の真ん中辺りを見ると二人の女子がおしゃべりに花を咲かせていた。
(ああ、美月さんとネネちゃんか。いつも一緒にいるな、あの二人は)
慶太はそう思いながら荷物をまとめ始めた。
ガラリとドアが開いて、誰かが入ってきた。
担任の桜先生だった。
「あらあ、まだいたの。早く帰りなさい。もうすぐ下校時間よ」
桜先生は女性の先生で、担任を持つのは初めてだ。
三十代前半らしいが、見た目はまるで女子大生だ。
「はーい」
と答えたのは、幼女系女子高生のネネだった。
「先生、これから残業なの?」
「いえ、今日は早く帰れるわ」
「そう、よかったね。彼氏に会えるの?」
「え、な、何でそれ知ってるの」
「へへえ、ちょっとした情報網があるの。年下なんだって」
「もう、油断ならないな」
そこで、聞いてきたのが無表情キャラの美月だった。
「先生、ひょっとしてもうセ○○スしたんですか。フ○○○○とかク☓☓とか、あ、どんな体位が気持ちいいんですか……」
桜先生は真っ赤になって答えた。
「も、もう、いいじゃない私の事なんだから。ほっといてよ」
(ああ、切れちゃった)
そう思った瞬間、
バタン、バタン、バタンッ
と大きな音がして、ドアと窓が勢いよく全て閉まった。
あれ?
と慶太は思い、ドアに近づき手を掛けた。
(あれ、動かない)
ドアがピクリとも動かないのだ。
桜先生が聞いてきた。
「慶太君、どうしたの」
「ドアが、開かないんです。全く」
開かないなんてレベルではない。それはまるで一枚岩の様に動かなかった。
四人の脳裏に嫌な予感が走った。
帰れないかも。
最初のコメントを投稿しよう!