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「熱い!!熱い…!!」
闇へ墜ちていく悪魔の体は炎に包まれ始めた。微かに見えるのは炎に照らし出される自分の身体だけ。
(助けたんじゃない…!!それに、油断させ、弄んでそれで…!)
いくら悔やんでももう遅い。
娘は化けた自分だったとも知らずに感謝し、探し出して礼をするためだけに、自分に体を差し出し、少ない命を長らえていたのだ。
まさか悪魔である自分の為に…
闇の中、悪魔は混乱と後悔に苛まれたまま炎に包まれ消えていった。
「悪魔さん……」
何も分からぬまま、娘は霧に包まれ消えていった悪魔がいた場所を呆然と見つめていた。
ところがまた次第に白い霧が集まり始め、人の姿を形作っていく。
「…!!」
霧はすぐに晴れた。
そしてそこにいたのは、紛れもなく娘の恩人である男。歳も取らず、あの時と同じ姿のまま娘のすぐそばに倒れている。
「あなたは…!!」
娘は男の体を揺すった。
「お願い、起きて下さい…!!」
しばらくすると男はゆっくりと目を開けた。
「…ここは……?」
「えっと…ここは……」
ぼんやりとそう尋ねる男に娘は言い淀む。
姿は恩人の男でも中身はあの悪魔なのか、それとも恩人そのものなのか…
それにここが悪魔の屋敷だと教えても平気なものかを娘は迷っていた。
しかし、
「お前は…?なぜ俺はこんなところに…。何も、思い出せない…名前すらも……俺は、誰だ……?」
「あなた……」
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