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町外れの寂れた屋敷の前に佇む、一人の年頃の娘。
ここは悪魔が棲むと言われ、今はもう近づく者はいない屋敷だ。
辺りは暗く、月明かりだけが照らしている。
「また人間か。俺見たさに肝試しにでもきたか?脅し、逃げ帰るのは見飽きた」
衣服もすべて黒で統一され、肌は文字通り血が通っていないように真白。長身で細身の男が、霧のようにどこからともなく現れた。
「あ、悪魔…さん……?」
娘は怯えたように小さく掠れた声でそう問いかける。顔色は悪く、足は震え、今にも倒れそうだった。
「俺を『さん』付けする人間は珍しい。…何をしに来た?」
「あ、あの…お願いがあって来ました……」
「願いか…貧民の娘だな。金か?美貌か?」
少し呆れたように男は言う。すると娘は首をそっと振って言った。
「いいえ。悪魔であるあなたなら、私の願いを聞いてくれるかと……私を少し、生き延びさせてほしいのです……」
「は??」
聞き返す男に娘は必死に頼んだ。
「私は病気で、長く生きられないと言われているんです…半年持つかどうか、と…。でも私にはどうしても、まだしなければならないことがあって…だから、どうか……!」
しかし悪魔と呼ばれる男はバカにしたように娘に言う。
「悪魔なら出来るだろうとわざわざここへ来たのか。お前もどうせ、自分の為だろう」
「それは……」
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