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……
何年も前のこと。
幼い少女と少年の姉弟が薄暗い道を歩いている。弟は全く無表情のまま無言で、姉は悲しげに時々弟を見つめながら手を引いていた。
「お願い、笑って…?母さんと父さんが亡くなって、辛いのはわかるわ…でも、あなたまでこんな、お人形みたいになっちゃったら、あたし……」
そのとき、姉弟の近くを一人の男が通りかかる。
そして優しげな笑みを湛えてこちらにやってきた。
「…なんだ、子供か……こんな時間に薄暗い道を歩くものじゃない」
突然そう話しかけられ、少女はビクリと体を震わせる。
「…だが悪くない…。寒そうにしているな。暖めてやろう、こっちへおいで…」
穏やかな声でそう二人を呼ぶ、なおも優しげな笑顔の男。
「あ、あの…」
「…もう一人いるのか…。まあいい、子供なんて、抱きしめて口付けてやれば笑うものだからな」
男はそう言うと二人をそっと抱きしめた。
「わあ…温かい…!」
少女は声を上げ、嬉しそうに笑う。
「俺の家で温かいものでも食わせてやろう。さあ…」
さらに優しげに男がそう言った。
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