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「…なかなか良い…先にこっちの娘を……」
男が何かを呟き、さらに姉弟に近寄ろうとしたその時。
「メル!リズ!」
一人の女が姉弟に駆け寄ってくる。
「あ、おばさん…!!」
「手紙に、『二人だけでこっちへ来る』なんて書いてあったから心配したのよ!あぁよかった!」
女はしゃがみ込み、姉弟を見つめると安心したようにため息を付いた。
男はするりと三人の近くを通り抜ける。
「…ちっ…」
「おばさん、あたしたち大丈夫よ。でも、リズが……」
「わかっているわ…。迎えに来たのよ。さ、二人ともうちにいらっしゃい」
「あ、あと……あれ?」
少女が振り返ると、もう先ほどの男の姿はない。
不思議そうに首を傾げながらも少女は弟に向き直る。
「そうだ!…リズ、良かったね。おばさん、来てくれたよ…?さむかったでしょ…もう平気よ…」
少女は男の言っていたように、弟を抱きしめ頬にそっと口付ける。
すると弟は固く閉ざしていた口を開いた。
「…う…うん……おねーちゃん……」
「リズ…!!おばさん、リズがしゃべった!!ずっと何日もしゃべらなかったのに…!!」
少女は泣いて喜んだ。
「本当!?良かったわ!!じゃあ少しだけだけど、ごちそうを作らないと!」
「ありがとうおばさん!!…いつか、お礼をしないと!優しいあの人にも…!!」
そして三人は幸せそうに寄り添い、家に向かっていった。
……
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